続・しごと日記 〜新人君は見た!〜

[7] 初めての古紙回収 (2006年10月号掲載)

     今回、「古紙回収」のお手伝いをすることになった新人君。
 ご存知の方も多いかと思いますが、現在、古紙回収は販売店が委託した専門の回収業者がトラックで行っています。 通常、配達エリアごとに業者のみで行っていますが、狭い路地や坂道の多いエリアでは、 そのエリアに精通している配達社員がバイクで、道案内や手伝いをする場合もあります。
 我らが新人君、一人前の配達社員と見られたのか、今回、古紙回収の「案内」に初挑戦です。

○月△日

 古紙回収って何だ?
 入社した当時、この「古紙回収」という言葉を聞いて、理解できなかった。
  田舎の実家にいた頃は、「廃品回収」や「ちり紙交換」という言葉は聞いたことがあっても、 「古紙回収」なんて言葉は聞いたことがなかった。それに、「古新聞」は子供会の「廃品回収」で、 空き瓶、空き缶なんかと一緒に回収されていたし、都会ではいわゆる「ちり紙交換」業者が回収するのが 普通なんだろう……と考えていた。
 ところが、実際上京してみると、家電製品の回収業者がトラックで巡回しているのは見かけるけど、 「ちり紙交換」のトラックなんてほとんど見かけない。市の回収や、僕の田舎みたいな子供会や 自治会の回収もあるけども、実際こうやって毎月、販売店が回収するのが多いんだそうだ。
 朝刊の配達を終えて、一眠りしたら、朝9時に起こされて、販売店に集合する。 回収順路の打合せをして、さあ、出発だ。
  業者のおじさんはトラックで、僕はバイクでスタートする。
 区域に着くと、打合せどおりトラックの入れない狭い路地や、トラックが見落としたお宅の古紙を 回収する。回収した古紙の束は、次々にトラックの荷台に放り込む。だんだん慣れてきたころに、 ふとあることを思い出した。
 朝刊配達のとき、あるアパートの2階の部屋の前に、緑色の袋に入った古紙の束が置いてあった。 朝、アパートの前に出す準備をしているんだろうと思って通り過ぎたけど、今のぞいてみたら、 そのアパートの入口には一個も古紙の束が出ていない。
  「ひょっとしたら……」そう思って階段を上がると、案の定ドアの前に緑色の袋が出しっぱなしになっている。 その時は、朝慌てていて出し忘れたんだろうと思って回収したけど、あとで販売店に戻って先輩に聞いたら、 そのアパートのお客様は、何回お願いしても、いつも階上の自室前に古紙を出しっぱなしにするということだった。
 古紙回収では、必ず配達社員が同行するわけではなくて、業者のおじさんはトラックで回るので、 アパートの入口に出ていなければ、見落とすこともある。それで、「アパートやマンション等の集合住宅では、 トラックから見えるように建物の入口に出してください」と古紙回収のお知らせチラシに明記されているけど、 なかなか守られないお宅が増えているのが現状だ。
 ここ数カ月、回収もれを減らそうと、今までより丹念に回って回収するようになったせいで、 そういうエリアでは余計な時間がかかり、他のお客様にご心配やご迷惑をおかけすることにもなる……って これ全部店長や先輩の受け売りなんだけど……。

 とりあえず、東京で出会った「古紙回収」というものは、新人君にとっては配達や集金業務とは違った 「未知との遭遇」だったらしく、この日の彼の「古紙回収日記」はまだまだ続きます。
 この続きは次回にご紹介することにしましょう。
(ご年配の世帯やお体の不自由なお客様の場合には、個別に対応させていただくことも出来ますので、 販売店までご相談下さい)

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[8] 古紙回収 その2 (2006年11月号掲載)

古紙回収を初体験した新人君、その日の日記はいつになく長くなりました。 引き続き「古紙回収編」をご紹介しましょう。

○月△日

 今日の古紙回収の「案内」は疲れた。集金でお客様のお宅に伺うと、よく「毎日配達で大変ねぇ」 なんて言われる。「毎日の事だから、体さえ慣れてしまえばそれほど大変でもありませんよ。」 一人前にそう答えるんだけど、この古紙回収だけは半端じゃない。やっぱりこれも「慣れ」なのかなぁ……。
 回収業者のおじさんに「毎日回収大変ですね」って言ったら「毎日の事だから体が慣れてしまえば それほどでもないよ」って、どこかで聞いたような答えが返ってきた……。

 販売店に戻って、店長に案内終了の報告をする。アパートのドア前に出しっぱなしになっていた古紙の束のことを 話すと、店長は苦い顔をしていた。古紙回収に関して、販売店からのお願いを聞いてもらえないケースは他にもあるらしい。
 たとえば、あまり早く前の晩から古紙を出すのもそうだ。先輩たちの中には、古紙回収当日の早朝(朝刊配達時)、 販売店で配布している緑色の袋に入った古紙の束を見かけた事のないトラックが山積みにして走っているのを見かけたことがあるという。 つまり「古紙泥棒」だ。
 市場での古紙の価格が高くなってくると必ずといっていいほど現れるらしい。古紙を処分できるという点では、 お客様としてはどちらでも構わないのかもしれない。ただ、販売店の業者より先回りして古紙を横取りされると、 事情を知らないお客様は販売店が回収していったと思い「回収だけしてロールを置いていかないのか」なんていうことになり、 販売店とお客様の信頼関係が損なわれてしまう。
  このような回収業者は、規則的・定期的なものではないので、もっと回収効率の良いエリアを見つけたら、 いつ今のエリアを見限ってそちらに移ってしまうかもしれないし、古紙の価格が下落すれば回収をやらなくなってしまうかもしれない。 そういうことも現在の古紙回収の問題点だそうだ。
  「本当は、夜が明けてから出してもらえるとありがたいんだけどなぁ……」めずらしく店長がまじめな顔をして言った。 いやぁ、結構奥が深い。古紙回収、侮れないぞ。

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[9] 古紙回収 その3  (2006年12月号掲載)

 長かった古紙回収の日記も3回目の今月でいよいよ完結です。 

○月△日 

 古紙回収が終わると、夕刊配達に出るまで短い休憩に入る。ここで昼食をとるんだけど、 ひと仕事終えた後の飯は格別うまい。 
 夕刊配達の時には、回収のもれがないか一軒一軒丹念に確認しながら配達する。 「回収もれがあれば、夕刊の帰りに回収して来い」って先輩からも指導されたけど、今日はバッチリ 一軒のもれもなかった。「大したもんだ」って先輩もビックリしていた。
  先輩は昔、古紙回収の案内をした時に、エリアの中の一区画まるまる飛ばしたのを気付かずに回収を終えて、 夕刊配達中にとんでもない量の回収もれの古紙の山に出くわしたことがあるらしい。 夕刊帰りのバイクにも積み切れなくて、急いで販売店に帰って車で回収に行ったけど、 近所中の奥さん方が心配して表に出ていて、大目玉を食らったという話を聞かせてくれた。
  古紙回収は、回収が終わった時点で一回り、夕刊中にバイクでもう一回り、合わせて2周 回収もれがないかチェックする。大抵はこの時に気付いて回収するから先輩みたいな失敗は そう多くはないらしい。ただ、心配になって結構早い時間から販売店に問い合わせの電話をいただく お客様がいらっしゃる反面、回収が終わった後に出される場合もあるそうだ。 お客様に心配かけないようにしっかりした回収をしなくちゃ。
  夕刊配達が終われば、今日の仕事は終了。 朝刊配達後、朝9時から起きて古紙回収をした日は夕刊後の仕事はなく、みんなより早く終わる。 早起きした分、今夜はいっぱい眠るぞ!……と勇んでもいつもと時間帯が違ってなかなか寝付けない…… ということで、日記を書いている僕だった。

 いつもより長くなってしまった日記を閉じて眠りにつく新人君でした。3回にわたって紹介した 「古紙回収編」も今回で終わり。ただ、新人君日記はまだまだ続きます。
  12月、新人君はおそらく入社してもっとも忙しい日々を過ごすことになります。新聞屋さんに入って 初めての、店長言うところの「1年でいちばん忙しい月」師走の到来です。
  通常月末から始まる集金も、12月だけは中旬からお願いしていますし、毎年恒例のカレンダーのお届けもあります (カレンダーの配布については、今月のプレゼントコーナーでご案内しています)。元旦の朝刊に入れる折込チラシ (ちょっとした週刊誌ほどの厚さになる)の準備もあります。また、正月休みの間の配達お休み・お取り置きは 1年で一番多くなります。
  そして、元旦の配達が終わると新人君にもお正月がやってくるのです。初めての年越し、新人君はどんな体験をして、 何を感じ、どんな日記を記すのでしょうか?1月号では「新聞屋さんの年末年始編」をご紹介します。

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