続・しごと日記 〜新人君は見た!〜

[2] バイクに乗る (2006年5月号掲載)

 この春入社した新人君たちは、ちょっとずつではありますが仕事を覚え始めています。
「最近新しい子が新聞を配っているわね……」「今回の集金はいつもと違う人が来たわね……」と思われた方もいらっしゃると思います。相変わらず販売店ではバタバタとにぎやかな雰囲気が続いています。今回もそんな新人君の日記を覗いてみましょう。

○月△日 「バイクの練習」

 今日は朝からバイクの練習だ。原付には乗ったことがあるけど、カブは初めてだ。
  先輩のバイクが広い道から狭い道へと進んで行く。僕も置いていかれまいと先輩の後ろをふらふらしながらついて行く。カブの運転の大変なところは、一にも二にもギアチェンジ。「それさえ出来れば運転も様になってくるよ」と先輩が言う。
  なんとか乗りこなせるようになって販売店に戻ると、店長から順路帳というものを渡された。これを使って配達を覚えるらしい。『ト』とか『ム』とか記号で覚えるやつだ。
  順路記号を2〜3時間で覚えた。「記号の意味を忘れるなよ」と店長が言う。

○月×日 「順路取り」

 出勤すると、すぐに順路帳、いわゆる配達のアンチョコ(カンニングペーパー)を持って先輩に連れ出される。目的地は僕が担当する予定のエリアだ。順路帳の1ページ目の家から順を追って配達先を説明されていく。この作業を順路取りというのだそうだ。「新聞なんか家さえ分かれば大丈夫だろう」なんて、たかをくくっていたけど、実際に一軒一軒回っているとそんな考えを改めさせられる。
  門扉に3つもポストがついている家なんていうのもある。よく見ると、それぞれのポストに『新聞用』『郵便用』『回覧板用』と書いてある。小さい字だから朝刊の配達の時は気付かないかもしれない。3つもポストがある家はそう滅多にはないけど、2つポストがある家は結構あるんだな、これが!
  新築の二世帯住宅やポストを新しくしたけど古いのも残っている家。アパートで、ドアポストに新聞を配達する時の音が気になる読者が別のポストを用意していたり……いろんな理由があった。
  そういえば、僕の実家も新聞用と郵便用、2つのポストがあったなぁ……なんて考えていたら、背後で先輩がぼそっとささやいた。「ここの家、ポスト間違えると怒られるから注意しろよ」 うーむ、気をつけなくては……。
  その後も、まあ出てくる出てくる。生垣で隠れたポストの位置に注意、足元注意、足音注意、猛犬注意、バイク乗り入れ禁止……などなど、よく見てみると注意事項・禁止事項のオンパレードだ。こういうのも“配達の大変さ”なのかなぁ、とも思う。
  明日からは空回りといって、朝からバイクで配達順に従ってエリアをぐるぐる回る。そうすることによって、なんとなくでも配達順路が身に付くらしい。これを真面目にやっておけば、配達の所要時間がある程度読めるようになって、新人の僕が配達しても読者の皆様に迷惑をかけることがなくなるそうだ。
 「空回りの時間が短くなれば、いよいよ朝刊に出勤できるぞ」
  「はい!」
  朝刊出勤、という店長の言葉に奮い立つ僕でした。

 ……とまぁ、こんな具合で、我らが新人君は少しずつですが毎日成長しています。そんな彼が集金やご挨拶回りで皆様のお目にかかれる日はいつになるのでしょうか。

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